初診日:X年7月3日
■主訴
①目眩ふらつき
②午後からの発熱感・倦怠感
③耳鳴り・頭鳴
■主訴の状況
①目眩ふらつき
常に頭全体がモヤっとしていて、階段を降りる時や歩いている時にふらつきやすい。回る感覚がある。
入浴後は目眩ふらつきは寛解する
②午後からの発熱感・倦怠感
夕方になると、身体全体が重だるくなり、何もしたくなるような無力感を感じる。
この症状と一緒に、身体が熱っぽく感じる。
③耳鳴り・頭鳴
ジーというセミの鳴き声の高音で激しい音
左右差なし
2〜3年前までたまに感じる程度だったが、今は常時なっている。
頭鳴→寝る前の仰臥位になると、頭全体がズーンと響き、小さな物音でもビクッとする。
※本人が頭鳴と言っているが、実際はそうでないかもしれない。
■既往歴
0歳:熊本市出生、大きな病気なく健康に生まれる。
幼少期:小児喘息で2回ほど入院。
吸入器(ステロイド)の使用は覚えていない。
小中高:ソフトボールクラブ、卓球部
練習量は普通で、体力は問題なくついていけていた。
23歳〜:小学校の教員として就職する
マラソン大会によく出ていて、45歳まで続ける。
同僚とソフトボールやサッカーを行い、運動習慣は十分にあった。
29歳:結婚
食事のバランスもよく、大きな病気なし
55歳:父母の2人が入退院を繰り返していた時期で、看病のため、担当をしていた
部活の顧問をはずしてもらい、これ以降運動量が減る。
59歳:詳細は覚えていないがこの頃から、ペンなどを持つと手が震えるようになり、
病院にいくと本態性振戦と診断される。
この年の12月上旬に旅行中のお寺の境内で、ふらつき、後ろに転倒。
意識はあるものの、身体が動かなくなり救急搬送。
耳鼻科、神経内科、内科など合計4件医療機関を訪れるが、原因不明。
検査結果などでも異常なし。
60〜:定年退職後も運動習慣がなく、ずっと家にいるためか、夕方以降、腰に重だるい痛みが出るようになる。
あわせて、この頃から夕方に身体が熱っぽくなる症状と夜間尿で目が覚めるようになる。
<その他の問診情報>
肩がこる
めまいがする
目の症状(かすみ)左=右
耳の症状(耳鳴り)左=右
悩み・心配事・不安がある
疲れを感じる(夕方)
診察
顔面気色診
心肝→赤黒
腎 →青黒
脈診
緩滑
緩不足
左右の寸口部に枯脈
脈幅+
脈力+
重按ー(右)±(左)
舌診
舌背(表)→紅色、白膩苔、舌先の紅刺
舌腹(裏)→紅色 舌下静脈の怒張
形:歯型あり(歯痕)
腹診
心下、脾募(左>右)臍周、右肝相火
背中
左心兪、左肝兪、左膀胱兪・・虚
右肝兪、右胆兪・・・実
八椎下・・圧痛あり
<東洋医学的診断>
腎陰虚>肝気上逆
<1回目治療>
左足首のツボに、15分1本刺鍼
よくなることを告げ、最初の間は週1〜2回通院するよう告げる。
<2回目治療>
初診日から10日後に来院
「治療後、ふらつきがかなりマシになり、体のほてりや倦怠感が楽になった」とのこと。
昨日からまたふらつき、だるさが出てきているため来院された。
左足首の同じツボに、25分1本刺鍼
通院指導・・悪くなってから治療に来られても治らないので、症状が出る前にしっかり治療をしておいた方が良いことを告げる。
<3回目>
9日後に来院
「治療後、3日間は調子が良かったが、以降夜くらいからふらつき、だるさが少しずつ出た」
左足首の同じツボに、30分1本刺鍼
この症例では、左足首への一本鍼で目眩や午後からの発熱の症状が奏効した1症例となりました。
しかし、症状の改善はあるも、お伝えした通院頻度や症状がどう変化していくかということを上手く患者さんに伝わらなかったのが、3回目以降来院されなかった理由ではないかと思います。
治療を続けていれば、もっと良くなっていたと確信していた分、もったいないと感じる症例でした。
これも私の力量の問題です。反省
■症状の解説
めまい
東洋医学の古医書「素問」には、「諸風掉眩ハ皆肝ニ属ス」と書かれてあります。
めまいは、身体の中で風が吹いているようなイメージですね。
このような諸々の風は、肝臓が原因と古い医学書には書かれてあります。
夕方以降の発熱感
これは東洋医学では「潮熱」と言われるものです。
あたかも潮の満ち引きの様に、規則正しく、いつも同じ時間に発熱が起きたり、熱勢が強くなる症状をいいます。
一般には午後に多く発熱し、【陽明腑実の潮熱】【陰虚の潮熱】【瘀血内結の潮熱】などがよく現れます。 他にも有り
今回の症例の発熱感は、この「陰虚の潮熱」です。
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