病気には、その人に過失がないように思えるのに生じ、暫くすると自然に治ってしまうものもあります。
薬を服用させなくとも治癒してしまう病気の存在に気がついた人々は、これを【无妄の疾】と名付けました。
无妄(むぼう)とは、「無望」。
つまり望んでもいなかったことが、自然に実現することです。
望んでもいなかったことは、あくまで自然の理としてそうあるのですが、人は自らの価値観から、それを良いものとしても悪いものとしても受け止めることがあります。
病気が生じ、去る過程を、大自然の内なる様々なものの循環と、そのうちに在る人の身体に生じるプロセスとしてみれば、あくまでひと連なりなものです。
しかし人は発病を悲しみ、治癒を喜びます。
病いが「無望」のものだという視点は、こうした人々の感情とは別に、人為を超えた自然のプロセスとしての病気というものがありうる。という事実を人に認識させるでしょう。
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