東洋医学的な夏の養生法
- yuki kiyama
- 6 日前
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『黄帝内経』『難経』『傷寒論』『温病条弁』に学ぶ、真の夏バテ対策と身体の整え方
こんにちは、伝統鍼灸 渓風院です。東洋医学には、数千年の歴史の中で蓄積された季節ごとの体の整え方、「養生法」が数多く残されています。
特に「夏」という季節は、私たちの体に最も強く自然界の影響が現れる時期。
今回は、一般的な夏バテ対策を超えて、東洋医学の古典に基づく、本質的な「夏の養生法」をご紹介します。
夏は「火」「心」「陽気」が中心

東洋医学では、自然界と人間の身体を五行で捉えます。夏は「火」に属し、体の中では「心(しん)」と最も深く関係しています。
『難経』六十九難には、こうあります。
「心者、君主之官、神明出焉。」(心は君主の官であり、精神や意識はここから生まれる)
つまり、「心」は単なるポンプとしての心臓ではなく、精神活動全体の中枢であり、血の巡りや意識、感情にも関与します。
そのため、夏は心の働きが乱れやすく、不眠・動悸・イライラ・集中力低下といった不調が出やすくなるのです。
『傷寒論』や『温病条弁』に見る夏の注意点
夏は、陽気が最も盛んになる反面、外界の暑邪(熱や湿気)が体に入り込みやすい季節です。
後世の名著『温病条弁』(清代・葉天士)では、夏の病の原因として「暑邪」を重視しています。
「暑為陽邪、最易傷津耗気。」(暑邪は陽邪の一種で、最も津液を損ない、気を消耗しやすい)
つまり、夏は汗をかきすぎると体液(津液)が失われ、気(エネルギー)まで消耗してしまいます。この状態が、いわゆる「夏バテ」や「脱水」につながるのです。
また、『傷寒論』では、暑さとともに「湿邪」が体に停滞することによる腹部の不快感、下痢、倦怠感にも注意を促しています。
夏の典型的な不調と東洋医学的原因
症状 | 東洋医学的診断 |
不眠・夢が多い・焦燥感 | 心火亢盛・心陰不足 |
食欲不振・下痢・腹部の張り | 脾虚湿盛・湿熱困脾 |
倦怠感・無気力 | 気虚・津液不足 |
むくみ・皮膚トラブル | 暑湿内停・水湿停滞 |
夏は、「暑」「湿」という外邪が結びつきやすく、これを「暑湿」と呼びます。特に日本の夏は高温多湿のため、暑湿による脾胃の負担が顕著で、胃腸障害やだるさが起きやすいのです。
東洋医学に基づく本質的な夏の養生法

① 適度な「発汗」と「保津」
『素問』にもあるように、「夏は陽気を外に発散させる」ことが大切ですが、発汗しすぎは津液を損ないます。つまり、「汗をかくのは良いが、かきすぎは禁物」という絶妙なバランスが求められます。
▼ポイント
適度に外出や運動をして汗腺を開く
汗をかいたらすぐに補水(白湯や麦茶)
冷房で汗を冷やしすぎない
② 胃腸を守り、気を養う
東洋医学では「脾は後天の本」といわれ、胃腸が体力と気力の源です。冷たい飲食物の摂りすぎ、暴飲暴食は「脾胃」を傷め、気の消耗につながります。
▼おすすめの食材
気を補う:山芋、豆腐、鶏肉、なつめ
津液を養う:梨、きゅうり、トマト、西瓜(過剰注意)
暑湿を除く:緑豆、苦瓜、ハトムギ、ミント、紫蘇
③ 心神を静める
夏は「心」の季節であり、精神が乱れやすい時期。睡眠の質を高め、気持ちを安定させることが養生の柱です。
▼効果的なツボ
神門(しんもん):手首の小指側、精神安定・不眠改善
内関(ないかん):手首の内側、胸のつかえ・不安感を取る
太衝(たいしょう):足の甲、肝の熱を冷まし、イライラ軽減
当院でも、これらのツボを活用し、夏特有の不調に対応しています。
【まとめ】東洋医学の知恵で夏を快適に
東洋医学の古典は、単なる古い知識ではなく、現代にも通じる非常に実践的な「夏の健康法」を教えてくれます。

▼夏を健康に乗り切るための要点
陽気を外に発散し、こもらせない
発汗と補水のバランスを保つ
胃腸を冷やしすぎず、消化を助ける
心神を安定させ、眠りを整える
当院では、個々の体質や季節に合わせた鍼灸と生活指導を行っております。「夏バテが抜けない」「不眠やイライラがつらい」「胃腸が弱りやすい」といったお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。
ご自身の身体と自然界のリズムを整えることで、夏はもっと快適に、健やかに過ごせます。古典に基づく、本質的な「養生」を、日々の暮らしにぜひ取り入れてみてください。
伝統鍼灸 渓風院