動眼神経麻痺による眼瞼下垂と複視の1症例
熊本市で東洋医学専門の鍼灸治療を行う当院では、内科的な不調や自律神経の乱れなど、原因がはっきりしない症状にも対応しています。 このページでは、実際に来院された方の症例と、その診察・施術の流れをご紹介しています。同じようなお悩みをお持ちの方の参考になれば幸いです。
初診日:X年10月19日

患者さん情報
50代男性 販売業会社員
平日は朝8:30ー17:30まで仕事
主訴発症して以降、好きなゴルフができていない。
服用中のお薬
メコパラミン錠0.5mg
トコフェロールニコチン酸エステルカプセル100mg
エパルレスタット錠50mg
お悩みの症状
眼瞼下垂(左まぶたが開かない)・複視(物が二重に見える)
眼瞼下垂
左まぶたが開かない
※夜は光の加減のためか、少し開きやすい
複視
左の眼球がほぼ動かない(左側に少し動く程度)
左まぶたを持ち上げて両目で見ると、左の眼球が動かず、視野が固定されているので、右の視野と重なってしまい、平衡感覚がおかしく気持ち悪くなる。
※現在の病院での見解
両眼球のサイズは均等になってきているが、眼瞼下垂、復視の症状に変化はないとのこと。

既往歴〜現病歴
小学生:扁桃腺肥大症
35歳:ぎっくり腰
47歳:尿管結石、五十肩
53歳:糖尿病
今年:7月半ば(主訴発症2か月前)〜8月
仕事が忙しく定時を過ぎてしまうことが多々あり、好きだったゴルフの打ちっぱなしに行く頻度も減っていた頃、コロナウィルスに感染する。
38.2℃の発熱、悪寒、節々の痛み、食欲減退、倦怠感などの症状があり、上半身や後頭部に寝汗をかき、解熱。1週間〜10日程で治る。
このコロナ感染が治癒して以降、仕事中の疲労感を感じやすく、冷房に当たると寒気を感じるようになる。
9月頃
会社の人間関係や会社への不満などストレスが貯まり、イライラすることが増えていた矢先、朝起床時に、左側の眼瞼が半分くらいしか開かないことに気づく。その2日後には、普通に生活をしているときに完全に閉じるようになる。
(左目を開けようとすると、今より少し開く程度)
耳鼻科(痛み止めの処方、副鼻腔炎ではないとのこと)
↓
脳神経内科にてMRI検査 異常なし
糖尿病合併症の可能性(現在服用の薬で2週間様子を見る)
↓
症状変化なし、再度MRI検査異常なし
動眼神経麻痺と診断される。
直近2週間の状況
抗ウィルス薬を服用し1週間経過した頃、悪寒がマシになってきているが、目の症状は変わらない。
初診当日の数時間前
脳神経内科→眼球の大きさは均等になってきているが、症状不変。
当院を受診
その他の症状
首肩がこる
関節が痛む
めまいがする
目の症状(疲れ・かすみ・光が眩しい涙がよく出る)
悩み・心配事がある
眠れない
冷え性
疲れを感じる(朝・夕方)
患者さんの体表観察情報

顔面気色診
神:栄
色:赤黒
形:肥
態:左目のみ開かない

背候診
左膈兪虚、左肝兪虚、右肝兪実、右脾兪実、右膀胱兪

舌診
舌色:淡色〜紅色
舌質:白薄苔
舌形:歯痕舌
舌下静脈の怒張

腹診
以下に硬い邪あり
心下
両脾募
胃土、左の大巨反応、

脈診
一息三至半
按じて滑大・左の関上旺気
脈幅:有り
脈力:有り
重按:有り
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経穴診
左神門虚、右合谷実、右内関実、右後渓実熱、右丘墟虚、左照海虚、右申脈虚、左血海実
東洋医学的な診断名
肝気上逆、肝風内動
肝臓の気の停滞が上に上がり、頭部などの上半身で風が吹いてしまい、左 目を侵したと推察する。
治療経過
初診

治療・・・百会に1本刺鍼 20分
<2回目治療>6日後来院

初診治療後の翌朝、寝汗を全身にかいた。
その日は 鍼後のだるさが少しあったが、夜には回復した。
治療後3日後から左目が開くようになり、極力両目あけて見るように心がけている。二重に見える症状は、変わらない。
治療・・・百会に1本刺鍼 25分
<3回目治療>6日後来院

鍼後のだるさ眠気なし。左目は自然に開くようになってきている。
二重に見える症状は、変わらない。
治療・・・百会に1本刺鍼 30分
<4回目治療>7日後来院

眼瞼下垂はだいぶ良い 。
二重に見える症状は、上を見るときは両目の焦点が合うようになってきた。
両目で、右を見る→左を見るときに二重に見えて気持ち悪い。
治療・・・百会に1本刺鍼 30分
<5回目治療>7日後来院

眼瞼下垂はだいぶ違和感もなくなってきている。
最初10→現在2弱くらい
二重に見える症状は、左下を両目で見ると二重にみえる。
治療・・・百会に1本刺鍼 35分
以降、写真では分からないほど改善しているため、写真添付なし
<6回目治療>7日後来院
だいぶ調子いい。前回2弱→1弱程度
二重に見えるのも減り、酔うような気持ち悪さは感じない。
体全身の疲労感も軽くなっている。
治療・・・百会に1本刺鍼 40分
<7回目治療>7日後来院
違和感なし。前回1弱→0.2くらい
少しPC作業で疲れてくるとまぶたが重く感じる程度。
また、以前まで仕事のPC作業20分ほど行うと、すぐに目が疲れていたが、最近は5〜6時間作業をしてやっと目が疲れるくらいになっている。
治療・・・百会に1本刺鍼 40分
<8回目治療>14日後来院
複視も眼瞼下垂もOK。PCを長く触ると目が疲れてくることはあるが、休みの時は何も感じない。
治療・・・百会に1本刺鍼 35分
以上で、治療を卒業されました。
こういった動眼神経麻痺や顔面神経麻痺などは、熱病、実型である場合は早期に治っていく事が多いです。この方は気逆(気血が上に上がりやすい)しやすい体質のため、偶にメンテナンスをしておくことをオススメ致しました。
同じ症状でお悩みの方へ
これまでに当院で対応してきた症状や、東洋医学の視点からの考え方を、ブログでも詳しくご紹介しています。「病院では原因がわからなかった」「なんとなくの不調が続いている」そんなお悩みを抱える方に向けて、少しでもヒントになるような情報をお届け できればと思い、書き綴ってきました。同じような症状でお困りの方の参考になる記事を、こちらにまとめています。体のことを知るきっかけとして、そして「一人じゃない」と感じていただけるきっかけになれば幸いです。