胸〜脇痛の1症例
熊本市で東洋医学専門の鍼灸治療を行う当院では、内科的な不調や自律神経の乱れなど、原因がはっきりしない症状にも対応しています。
このページでは、実際に来院された方の症例と、その診察・施術の流れをご紹介しています。
また、掲載している症例はすべて、患者さんご本人か ら同意をいただいたうえで紹介しております。
同じようなお悩みをお持ちの方の参考になれば幸いです。
初診日:X年6月8日

患者さん情報
70代女性 福祉サービス業勤務
服用中のお薬
なし
お悩みの症状
右胸〜右脇の痛み
右胸(乳腺付近)〜右脇腹にかけて広範囲にズキズキ・ヒリヒリとした痛みがある。また、同時期から首肩こりがある。

既往歴〜現病歴
幼少期
大きな病気はなし。
早産で生まれ、体が弱かったと言われていた。
20代
結婚・出産・育児期間
産後による体質の変化なし
30代〜40代
子宮筋腫発症。
最初は経過観察であったが、とても大きくなっていたため、手術を行う。
70代
ずっと運動習慣はなかった。
3ヶ月前
友人の誘いでジムに2日間行き、上半身・下半身ともに、重たい器具をハードに行う。
2日目の早朝に、右肩こり・右胸に耐えがたいズキズキとして痛み・腫れぼったいような症状が出現し、安静時でも常に痛かった。かかりつけの鍼灸院で肩に鍼をしてもらい、NRS10→NRS3と楽になる。施術2回目に鍼+マッサージを行うが、以降、痛みは変わらなかった。
現在
この鍼灸院で診てもらっていた先生が体調不良?で診てもらえなくなり、当院を受診。
その他の症状
首肩こりがある
胸の痛みがある
夜間尿がある
足が冷える
患者さんの体表観察情報

顔面気色診
神:栄
形:中
色:心肝 青白 腎青黒
腠理:密 膏沢:なし

背候診
右厥陰兪実・右心兪実・左胆兪虚中実・右胆兪実・左脾兪虚・右脾兪実・左膀胱兪虚・右冷え

舌診
舌色:紅色
舌苔:白薄苔
舌腹:紅色
裂紋・やや陰虚舌

腹診
以下に硬い邪あり
大腸(左天枢付近)
右脾募〜右肝相火

脈診
三至半 左関尺に枯脈
脈幅+
脈力+
重按 ±
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経穴診
右大陵実・左太渓虚・右太衝実・左三陰交虚・右三陰交実etc
東洋医学的な診断名
右上の気滞血瘀 (背景に腎虚+空間下前に瘀血あり)
治療経過
<1診目>
右脾募(お腹の右上付近のツボ)・・1本鍼15分
<2診目>1週間後に来院
鍼後、 右胸と右脇までの広範囲の痛みが全部とれて、とてもびっくりした。
右乳腺 の一部分のみ痛みが少し残るため、来院。
前回の施術以降、肩こりもなくなったとのこと。
右脾募(お腹の右上付近のツボ)・・1本鍼25分
<今回の症例を東洋医学的に考えると>
東洋医学では、痛みの状態を「気(エネルギー)の滞り」と「血(血液)の滞り」の程度によって考えます。
一般的には、以下のような段階があります。
① 気の停滞レベル
張ったような痛み
痛む場所が移り変わる
動かすと楽になる
この段階では、主に「気」の流れが悪くなっている状態です。気の巡りが改善すると、比較的早く症状が軽減することがあります。
② 気滞血瘀レベル
(気の停滞が長引き、血の巡りにも影響が出始めた状態)
動き始めに痛む(スターティングペイン)
鈍い痛みの中にズキズキした痛みが混じる
今回の患者さんは、初診時の症状から考えると、この段階に該当すると判断しました。
③ 瘀血レベル
(血の滞りが強くなり、慢性化した状態)
夜間痛がある
痛みで目が覚める
刺すような固定した痛み
動かすほど痛みが強くなる
この段階になると改善までに時間がかかることが多くなります。
<本症例から考えられること>
今回の患者さんは、初診時の症状だけを見ると「気滞血瘀」の状態と考えられました。
しかし、わずか1回の治療で症状が大きく改善したことを考えると、実際には血の停滞よりも「気の停滞」が主体であった可能性が高いと考えています。
東洋医学では、同じ痛みでも原因や程度によって治療方針が変わります。本症例は、「気の巡り」を整えることの重要性を改めて示してくれた症例であったと考えています。











